野党の質問時間を減らそうとするのは民主主義の真逆

2017 11.02

 衆議院選挙で多くの議席を獲得すると、たちまち与党側は、議会での質問時間を議席数で比例配分すべきだと言い出した。

 野党:与党の質問時間の割合は、以前は7:3だったものを、自民党が野党の時代に8:2にするよう要求し、当時の与党の民主党が了解したものであるという。
 自分たちが要求して野党の質問時間を増やした経緯を頬かむりしてまでこのような恥知らずなことを言い出す現政府与党は、よほど質問されたくないのであろう。

 このサイトでは何度も申し上げていることであるが、我々は皆凡夫である。不完全で失敗ばかりしている平凡な人間だ。その凡夫が寄り集まって、なんとかなるべく間違いの少ないやり方で社会を運営していかねばならない。その方法が、民主主義である。
 民主主義は、多数決ではない。多数決では、「空気」に操られた付和雷同で大きな間違いを犯しかねない。特に日本人の場合、「空気」の乗ってはしゃぐ輩や、「空気」に抵抗できずに唯々諾々と服従する人が多いように思われ、おかしな方向に走り出す危険性は高い。みんなで歩調を合わせることばかりに躍起になって、行先もわからぬまま突き進む「ムカデ競争」社会に陥りがちだ。
 本当の民主主義は、熟議である。少数意見であれ黙殺せず、議論し批判しあう。間違っているものは論破し、異なる意見は批判しあうことで互いに考えを深め合っていく。そのようにして凡夫の過ちをできる限りそぎ落として正しい答えを探っていくのが本来の民主主義だ。
 今回の、野党の質問時間を減らそうとする与党の考えは、民主主義の真逆である。政府与党、すなわち執行する側は、安倍首相の言葉どおりに、批判を積極的に聞いてそこから学ぶ「謙虚な」姿勢を持たねばならない。このところの日本は、政治的にも経済的にも重要性を失い凋落の一途なのだから、どのような国にすべきか熟議によって一から真摯に問い直さねばならない。政治が正しければ、国民の生活を向上させ、世界の人々にも貢献する国になれるはずだ。

 野党の質問時間を削減しようとする今回の与党の態度は、国民のことはどうでもよくて、よい国づくりをしようとする志もなく、自分たちの権力維持だけが重要で、誰にも批判させないという考えの表れである。