国の専管事項を村で論ずること。沖縄など

2015 12.08

中川村HP 『村長からのメッセージ』より転載

 12月定例議会で、お二人の議員から、沖縄のこと、国の専管事項を村で論ずること、などについて一般質問を頂いた。ここに答弁メモを掲載しておきたい。一問一答形式のため、実際のやりとりでは内容が前後したり多少の脱線もあったが、言わんとしたことは以下の通りである。

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A議員

★質問  議会で開催した住民懇談会で「国の施策について村で議論するのはなじまない」との意見があった。これにどう答えるか。

◆答弁  安全保障や外交やエネルギー問題などは、国の専管事項であるから、自治体は口を出すべきでない、という意見を時々耳にする。しかし、これは、「身の程をわきまえて黙っていろ」という圧力だ。
 専管事項と言われて黙っていたら、大変な目に遭わされているというのが、福島の原発事故による災害。昔を振り返れば、国策に無批判に従って、長野県、特 に伊那谷は、多くの満蒙開拓団を送り出してしまった。お国のためだと多くの若者が徴兵され、ふるさとの田畑から引きはがされて遠い異国の地に連れて行かれ た。国の間違った政策は、村の暮らしに大変な影響を及ぼす。TPPもしかり。国の政策にたいしてもしっかり批判的に考えることが必要。
 自治体は、住民と国の間に立たされている。住民-自治体-国の関係が円満に進んでいるときはいい。しかし、時として住民の自治と国の統治とは対立する。 その時、自治体は、国の統治の末端を担って住民を統治しようとするのではなく、住民の暮らしのために住民の自治の砦となるべきだ。
 その反対の端的な例を挙げれば、国の要請に従って、原発災害時のできもしない避難計画をアリバイ的に作る自治体があれば、その自治体は、住民の命もふるさとの歴史や文化も、どうなっても構わないと考えていることになる。
自治の砦は、沖縄だ。沖縄は、住民の意思に従い、住民の生活や伝統文化や美しい自然を守るため、沖縄県、基礎自治体、住民が一体となって、国の計画に粘り強く抵抗している。しっかりと腹を固めて自治に取り組む沖縄の姿勢に見習いたい。
 また、全国町村議会議長会は、先月11日の全国大会で、日米地位協定の抜本的な見直しを求める特別決議を採択した。日米地位協定は、日米安全保障条約の 隠された核心ともいうべきもので、これによって米軍による事故、犯罪は実質的に治外法権とされており、沖縄を中心に多くの被害者が泣き寝入りを強いられて きた。東信地方で、夜中にジェット機のごう音らしいものが響いても、その正体さえ調べられないのも地位協定のためだ。日本国憲法が保障する国民の基本的人 権より、日米地位協定が定める米軍の権利が優先されている。地位協定は、外交や安全保障に関連する問題だが、大きく捉えれば、日本の国としての自治も主権 も、地位協定によって脅かされていると捉えるべきだ。全国町村議会議長会は町村を代表する立場で真正面から問題提起をした。勇気あるすばらしい決議である と敬意を表する。
 地方自治は民主主義の学校と言われる。意見の表明や議論を禁じるところに民主主義はあり得ない。国の施策は、国民である村民の生活に大きな影響を及ぼす のであるから、村においても大いに議論されねばならない。自粛しない自由闊達な「空気」が、村を活気づけ発展させると信ずる。

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B議員

★質問1  村長は某会議で「物議を醸す人間」と自称した。村長という立場を踏まえて行動すべきではないか。政治活動の頻度は?

◆答弁1  会議の場を和ますため「物議を醸す」という表現を使ったが、言わんとするところは真剣だ。「物議を醸す」とは、空気を読んだり、立場をわきま えてふるまったり、周囲におもねて発言をするのではなく、問題提起すべき時は、批判を恐れず、しっかり堂々と声を上げるという意味である。
 周囲に同調している内に自分の意見が言えなくなり、国をあげて間違った方向に進み、最期には「私は貝になりたい」と言い残して処刑されるような時代が、 日本にはほんの数十年前にあった。それを繰り返さないためには、少数意見を、みんなとは異なるという点だけで、大切にし尊重することが重要。多様な視点か ら議論して正解を探す。それが民主主義だ。
 そういう多様な意見が自由に交わされる「空気」を熟成するためにも、私は自分の考えを積極的に表明し、物議を醸し、「空気」の壁を緩めていかなくてはな らない、と思っている。民主主義の根付いた自由闊達な風通しのよい村にしていくことが、村の活力を生み、村を成長させる。
 しかし、これは、批判するなという意味ではない。批判は大切。批判によって、少数意見も鍛えられしっかりした考えに成長する。
 しかし、空気を読め、立場をわきまえろ、という言いかたで発言や行動を止めさせようとするのは、批判ではなく圧力。議員のご質問にそういう意図があるならば、しっかりと抵抗する。

 村外から声がけを頂き、発言の場を用意して頂くのは、2ヶ月に一度程度か。業務予定表を見てもらえれば分かるとおり、私用としてでかけている。日程がとれずにお断りすることも多い。

★質問2  村HP「村長の部屋」の内容は、沖縄や辺野古、安保関連法案、オスプレイなどが多く、村政に関わりがない。村政にどう生かすのか

◆答弁2  先ほどA議員への答弁で申し上げたとおり、住民自治の砦として頑張っているのが沖縄。
 そして、戦後の日本社会、日本政治の矛盾が一貫して剥き出しの暴力性で噴出してきたのが沖縄。その矛盾は、沖縄だけの問題ではない。矛盾の噴出口が沖縄 に集められてきたので、我々には見えにくくされているが、戦後の日本社会全体の根底に潜む矛盾。ここに知念ウシさんという方の書かれた『シランフーナーの 暴力』という本を持ってきた。シランフーナーというのは、知らんぷりという意味。矛盾に苦しむ沖縄に知らんぷり、みえないふりをしながら、我々ヤマトは矛盾の上に安住してきた。しかし、原発災害やTPP、安全保障関連法案などで、我々にも矛盾が見え始めた。長野県東信地域がアメリカ空軍オスプレイの訓練空 域に設定されたというのも、そのひとつ。
 表面上の見せかけはともかく、突き詰めていけば、日本という国は真の自治や主権を持っているのか、という疑問。
 日本社会全体の根底に横たわる矛盾が沖縄では生々しく現れているのだから、沖縄に学べば、我々みんなが共有する課題が見えてくる。TPPなど様々な問題を深く考えるためにも、沖縄に目を向けることには意義がある。
 また沖縄は、矛盾に長く苦しめられ、それと闘ってきた分だけ、民主主義が鍛え上げられている。沖縄に学ぶことは、我々自身の民主主義を深めることに繋がる。
 お仕着せの民主主義ではなく、住民が主体的に声を上げる本来の民主主義のため、自由闊達な村の「空気」づくりを続けていくためにも、今後も沖縄の話題は取り上げていきたい。
 さきほどA議員への答弁で触れたとおり、全国町村議会議長会は、日米地位協定の抜本的見直しを求める特別決議を出した。これは、沖縄県町村議会議長会会 長である嘉手納町の議長さんの呼びかけに全国町村議会議長会が応えたもの。沖縄からの問題提起を日本全体の課題としてとらえて行動した全国町村議長会に敬意を表する。
 一方で、中川村議会のなかに、沖縄の問題を自分たちの問題として捉えることができず、他人事だとして、誰かがそれに触れることを止めさせようとする考えがあるならば、大変恥ずかしいことだと思う。

★質問3  地区懇談会をもっと積極的に実施すべき

◆答弁3  何かのテーマについて村民の考え方を知りたい時や、村の考えを説明して村民の意見を聞きたい時は、地区懇談会を実施してきた。住民アンケートなど他の方法を採ることもある。
 しかし、村民のみなさんも忙しいのに、しょっちゅういろいろなテーマを掲げて集まってもらうのは負担を掛けることになる。
 「村長への手紙」もだし、電話や役場への来訪、立ち話など、さまざまなやり方で意見は寄せられている。
 役場がお膳立てをした意見表明、つまりお仕着せの上意下達の民主主義ではなく、問題意識のある住民からの主体的な突き上げの意見表明こそが本当の民主主 義。意見表明の場をお膳立てすることよりも、自由闊達にものを言い合え、批判し合える「空気」が村に流れるようにしていきたい。

以上。ご意見ご批判お聞かせ下さい。

2015、12、8   中川村長 曽我逸郎